勝新太郎が死んだ翌日の天声人語には「阪妻・嵐寛・勝新」と略される稀有な役者の一人として数えられていた。我々が「勝新」と耳にするときには、他の何ものにも変え難い心地よさがあったのは間違いない。それはただ単に言葉の響きのよさから来ているものかもしれない。しかし、その心地よさを彼の生き方に投影させてしまいたくなるだけの力が彼にはあったのだろう。本書は勝新のその力が思う存分発揮されている。語り書きなのか、本人が書いているのかは分からないが、同様の心地よさが本書から感じることが出来る。そして、それはただ単に勝新の本だから、ということではなく、彼の表現力に来るものだと思う。ファンならずとも何とも言えぬ読後感を体験してもらいたい。