文字通り才色兼備だった如月小春さん。
7回忌を期して、彼女がその早過ぎる晩年の少し前にがっぷりと、
名優・中村伸郎に取材した名篇(初出は月刊「すばる」連載)が、
ようやく公刊された。
本書は大正から昭和の演劇史を丁寧に読み解いて、その時代、その場面で、
「俳優の領分」を全うした中村伸郎の演劇人生を描ききっている。
同時に、岸田國士から三島由紀夫を経て別役実に到る「新劇の言葉」についての考察は、
そのまま昭和日本、ひいては近代日本とそれを表現する日本語の格闘の歴史への、
鋭い分析にもなっていて、いちいち賛嘆させられる。
こういう仕事をもなし得た、多才にして多彩の人、如月さんの夭折が、
改めて無念に思われてならない。