山一證券破綻時の「社内調査委員会」及び「法的責任判定委員会」(いわゆる第三者委員会の先駆け)のメンバーにして、長銀粉飾決算裁判において最高裁で旧経営陣の法的責任(刑事及び民事)について無罪を勝ち取った著名弁護士の手になる記録。両事件ともマスコミ報道などを通じ断片的に知ってはいたものの、現場において正に当事者として関与された著者による生々しくかつ臨場感溢れる記載は、全二幕物のドラマを見るかの如き観があり、一気に読了した。(それにしても、修羅場にはその人の人間性が表出しますね。)
「危機管理の現場は修羅場である。知識や小手先の技術論は通用しない。成否を分けるのは、経営者の「危機に立ち向かう覚悟」である」(7頁)。
「民事部の裁判官が、判決文の中で、刑事部が出した判決について「いささか皮相な見方」という表現を用いて批判を加えるのは希有のことである。これは、国策に迎合して支離滅裂な認定を行う刑事判決に耐えかねた民事裁判官の「日本の裁判官のレベルを刑事判決からだけ判断してもらっては困る!」という気持ちのあらわれなのかもしれない」(183〜4頁)。
それにつけても、旧商法32条(現会社法431条)の「公正な会計慣行」をめぐる解釈が争点となった後者の裁判を通じて明らかとなった特捜部による国策捜査と刑事裁判官(地裁・高裁)のあたかも馴れ合いの如き関係には、全く唖然とさせられた。その意味で、本審における最高裁判決は本当に救いであったという他ない。