歴史好きなら一度は考える本能寺の変に関する研究本。鈴木氏と藤本氏の得意分野である歴史研究系である。
両氏の本には時々問題点があったりもするが、この本には比較的それがない。恐らくお互いがお互いの原稿をチェックして本にしたのであろう。その意味で非常に納得の行く論を述べられている。
詳細は他のレビュアーの方が詳しく書かれているので私が書く事は既にないが、自称でも他称でも歴史研究家なら目は通しておくべきだろう。
逆に歴史小説家にはちょっと厳しい本かもしれない。フィクションと割り切ってこの本を無視した小説を書くならともかく、歴史の事実を本にしたとしながらこの本の論拠を突き崩すのはかなり難しい。
強いて欠点として、この種の本ではやむを得ないのだが、引用部分が多い上に引用と筆者の考えが交錯するので、慣れていないと読みにくい。その意味では初心者向けとは言いがたいだろうか。
最後に、中国大返しに関して「常識では考えられない」と著者は述べているが、常識で考えられないと言うほどでもない。この行軍は戦前の帝国日本陸軍が行軍距離と軍の移動力から検証しており、その報告で「強行軍だが不可能ではない」との結論が出ていることを蛇足ながら記載しておく。