2002年に「非常銀行」で作家デビューし、それ以降のメガバンク経営陣、合併、不祥事、金融庁検査等々の自身の経験も含めた銀行小説はそれなりに面白く読んできた。しかしその後は作品によって出来栄えに大きなブレがあり、特に「円満退社」「社長失格」「合併後ー二十九歳の憂鬱」「渇水都市」などは最悪であった。サラリーマン論語小説として第一弾「四十にして惑わず」は聖書と並んで論語と会社生活を織り交ぜた短編集で、まだ新鮮に映った。しかし今回二弾目は、グロテスク、くだらない、意味がない、折角の論語が台無し、こういう形容が当てはまる。話の展開も内容も、もう少し書きようがあると思うが、8編とも見事に変だ。レビュアーの基準は違うだろうが、私には江上氏のどの作品にも五つ星を与えることは無理だ。例えば第1話は、ラッキー・ミート社の材料偽装が内部告発で不正発覚するが、北海道であったような事件だ。第2話は、家電量販店のリストラだが描かれる話は全く漫画そのものだ。第3話は、市場調査会社の課長が昼の蕎麦屋で会うマインドセット爺さんは「孔子」に違いないとなる。ここまで読んできて流石に勘弁してよとなる。第5話の「後世畏るべし」は居酒屋チェーン「民酒(みんしゅ)西荻窪店、店主は小沢次郎、オーナーは鳩山祐三、副店長は仙石太一、料理担当は山岡、荻窪店の店長は菅尚子、その副店長が野田となれば、滑稽どころか、いい加減にして欲しい。第8話の「未だ生を知らず」は哀れな57歳が悲惨で気持ちが悪くなる。江上氏は作品の発表頻度は高くなり結構ではあるが、もう少し作品の構成をしっかりと、質の高い、良質な小説に昇華出来るようにして欲しいものだ。少なくとも江上氏はserious金融小説に期待できるも、教訓めいたもの、荒唐無稽ドタバタ劇はまともに読めない。