噂には聞いていたが、小林秀雄の話し方は落語家の
志ん生にそっくりだ。
冒頭、「聞こえますか?」と小林秀雄がマイクの調子を
確かめるとき発する声は志ん生そのものだ。小林秀雄は
志ん生をお手本にして講演のしゃべり方を稽古したそう
だから、生来似ている声と相俟ってしゃべり方が似てく
るのは当然だろう。
私もこのCDを予備知識なしに聞かされれば志ん生が
ベルグソンや柳田国男を語っていると錯覚するかもしれ
ない。
このCDは昭和49年、夏期合宿の学生相手に講演した
もので、内容は
CD1:
1 ユリ・ゲラーの念力
2 ベルグソンの哲学
3 近代科学の方法
4 魂について
5 文学者・柳田国男
CD2:
1 信じることと知ること
2 なぜ徒党を組むのか
3 質問の方法
4 「考える」ということ
5 日本の神道
6 親と子
7 歴史は鏡
8 感受性は育つ
小林秀雄は口調と考えと、両方歯切れがいい。言うことが
断定的だ。これは自分の言っていることに自信がある証拠だ。
スプーンは曲がって当然だ。魂というものはあるに決まっ
ている。自分の経験と感情こそが本物だ。考えることは信じることだ。
学生相手に一生懸命語り、質問に答えるさまは、まさに
論語に出てくる孔子の「黙してこれを識し、学びて厭わず、
人に教えて倦まず」を彷彿させて、聞き終わったとき涙が
出てきた。