著者がこれまで論じてきた社会・政治思想、文学から、昨今の格差、セキュリティ、テロリズムをめぐる議論をも縦横無尽に駆使し、21世紀の「例外社会」の形成過程を検証した大著。この「例外社会」とは、世界内戦(地球化された戦争)という例外状態を織り込んだ社会のこと。9.11同時多発テロ以降、例外社会化は急速に進んでいるというのが、著者の見立てである。9.11以降、国家による監視社会化が一挙に進み、市民もそれを進んで受け入れ、市民同士の相互監視も進行し、国家的監視と社会的監視の二重化という事態に至っているが、これこそ19世紀、20世紀とは異なる、社会の21世紀的なあり方なのである。
他のレビュアーの方も指摘されているように、あまりに多岐にわたる思想家、文学者、事件が扱われているためか、議論が錯綜しているように感じられ、読みやすい本とは到底言えない。また700頁を越える分量なので、笠井氏の評論文によほど慣れた人でもない限り、途中で投げ出したくなるのではないか。また、引用されている文章の解釈が恣意的に感じられる部分も少なくない。しかし、著者は研究者ではないので、それはそれでよしとすべきであろう。こういう本は、学問的な厳密さよりも、著者の思索そのものが何よりもが重要であるし、読者が思索するためのきっかけやヒントを得ることで満足すべきものだ。