「レファ本」というのは著者の造語で,文章を書いたりものを調べたりするときに役立つ本という意味だ。辞書・事典・白書の類がこれに含まれる。が,ネット以外の調査手段としてこれらの本があり,図書館で閲覧できるというのは常識に属することだろう。『図書館を使い倒す!』(新潮新書)といった本も出ているし。
したがって,本書を評価するならば,「おお。こんな本があったのか!」と思わせる意外性や独自性を見つける必要がある。だが残念なことに,本書の中には,そのようなオリジナリティがはい。紹介されている本のレベルも,ムチャクチャである。
「法治国家ゆえに」の章では,以下の7冊が推されている(最新版にリンクを付した)。
1. 『似たもの法律用語のちがい』
2. 『刑事事実認定』
上・
下 3. 『
死刑の理由』
4. 『犯罪白書』
平成22年版 5. 『ペット六法』
第2版 6. 『
学校事件』
7. 『文部科学統計要覧』
平成23年版明らかにおかしいのは2. だ。上下巻計1万円を超える専門書を掲げている時点で,著者のレファレンス能力に大きな疑問符が付く。結局,著者は「読者のためになる本」を薦めているのではなく,「オレはこんな分厚い本を読んでるんだぞ」という自慢がしたいだけなのである。残念なことに,その成果が発揮されている著作に出逢ったことがないのだが。
もっとも,裁判員裁判も始まったことだし,刑事裁判の事実認定に興味を持つ人も増えたのかもしれない。そういう人には,石井一正『
刑事事実認定入門』をお薦めする。事実認定といっても,その本質は我々が日常生活で行なっている「推理」と何ら変わるところはない。日常生活においては,『図解による法律用語辞典』
補訂4版と『くらしの法律百科』
改訂新版の2冊があれば,結構役に立つと思う。
著者の「ボクは頭が良いんだ」自慢も結構だが,知っている人から見れば指摘するのが可哀想になるくらいのレベルだ。たぶんそのお陰で今までやってこられたのだろう。しかし,もはや笑って済ませられる程度を超えている。刑法学上の学説として「法定的符号説」「具体的符号説」「抽象的符号説」の3つを挙げているが(p.219),そんな名前の学説はありません。やさしめの刑法の教科書から勉強して下さい。「民法にはこんな条文もいまだ健在です」(p.219)と言いながら,2005年4月1日施行前の廃止された条文(317条)を引っ張っているのは一体どういう了見だ? 奥付を見ると本書の発行日は2006年1月10日だ。ちくま新書の校閲の無能ぶりまで暴露してどうする。
調べものをしようと思えば,一番便利なのはネットだ。とくにアマゾンで検索すると,目的の本以外の商品(サイフォンとか)まで表示されるので,レビューなども参考にしつつ,比較検討したうえで自分に必要なものが見つけられる。それでダメなら図書館である。本書がしゃしゃり出てくる余地は無い。