「党派の論理は信仰の論理とおなじだ。懺悔(自己批判)すれば赦しが与えられ、信仰を回復する経路につく。棄教したもの背教したものは、信仰をはじめからもたないが周辺にあるものより、もっと憎悪される。」
「わが国でのアジア的な共同体意識が、知識の内部に残存しているときの最大の弱点は、正義の名分に弱いということだ。そのときどきのディスポティズムを神聖化して至上化することと、神聖化されたものへの帰順によって、じぶんの弱さを合理化することとは同一だといえる。わが国の文学が、天皇のディスポティズム的な性格を神格化した意識と、スターリニズムを神格化した意識とは同一であった。」
「文学者の戦争責任をめぐる争論のなかで、文学(者)の現実社会への参加の要請を不変の媒介項として、スターリニズムとファシズムとが同一の文学者の内部で循環しながら、閉じられた領域をつくり、その周辺に同調者を集めるという文学理念の分布の仕方が、透視地図として描き出されていった。」
「現在は過渡的に古典的な概念と新しい概念が混在している。誰もが昨日じぶんが入ってきた入口がもう見えないから、引き返すことができない。その代りに、それぞれが空想している出口が、異なった形で混乱をひき起こしている。」