おおらかなのに繊細で、新しいのにアンティークの風趣を感じさせる、白と黒の器を作る井山さんの本。
「藤野の暮らし」、ものを「選ぶこと」、作品を「作ること」、「食べること」、「出会うこと」の五章で、井山さんの生い立ちや、自分の作品への考え、それを支える自然や本、人々との出会いが、柔らかく控えめな、でも達意の文章で綴られています。
「やきものやという不安定な仕事のうえに、女ひとり。」「中途半端な勉強しかしていないことにコンプレックスを抱えながら」という文章の端々からも、誠実で、けっして偉ぶらないお人柄がうかがえます。
作品同様に落ち着いた、本物を知る大人の生活が、数々の美しい写真で堪能できるのも大きな魅力。ものが少ないわけではないのに、これもまた、究極のシンプルライフではないかと思わされる、静かな空間に魅了されます。何度もながめ、何度も読み返したい一冊です。