本書は、米国で労働長官もつとめたことがある経済学者による、格差問題に焦点を絞った論考です。
表題の「余震」は、リーマンショック後の経済のことを指しています。リーマンショックというと、「行き過ぎた金融資本主義が原因」というのが一般的な理解ですが、本書では、より深層にある原因として、「所得格差の拡大」に着目します。所得格差が拡大すると、富裕層でお金がダブつくとともに、中間層でお金が足りなくなります。その結果、富裕層が投機に走るとともに、中間層は消費水準を維持するために借り入れに走ることになり、金融バブルの発生に至ると指摘します。このロジックに説得力を持たせているのが、1929年の大恐慌とリーマンショックとの類似です。1929年の前もリーマンショックの前も、富裕層への所得の集中度が上昇していたという点において、きれいに一致していることが、データで示されます。
こうした分析に基づき、著者は、所得格差を是正するための改革が必要だと説きます。具体的には、給付付き税額控除の拡充や、所得税の最高税率の引き上げなど。それによって所得配分が「適正化」され、中間層の消費が盛り上がることを通じて需要不足が解消し、経済成長のメカニズムが健全化していくと説きます。
本書の主張は、「所得格差を是正すべき」に集約されますが、なぜ所得格差が問題なのかという点について、マクロ経済の観点から丁寧に論じている点にオリジナリティがあります。対象としているのは米国経済ですが、日本にも所得格差の拡大(中間層の減少)や需要不足の問題は同様に存在します。日本経済の問題点や今後の経済政策の在り方を考える上でも、有益な本だと感じました。