静かな本です。現在の激務とそれに見合わない経済的困窮に置かれている医師の状況が正確にさらっとかかれています。そのため、最初から最後まで、等身大の医療を反映していて現実から乖離することがありません。隣に居る医師のような錯覚におちいる位リアルな描写でした。ガンの描写もさらりとしていてくどくない。そのような事より、本書で何よりも詳しく書かれているのは、人を愛すること、人の命の有限性です。人はそれ程沢山の選択肢があるわけでも、それ程迷う自由もなく、それ程悪人ではない。そういった日常の中で一生懸命生きた人の記録です。全てを読み終わり、文頭の「会いたいという気持ちに胸が押し潰されそうになり・・」のくだりをもう一度読むと、ひたむきに生きた主人公の女性へいとおしさがつのります。決して命の長さだけが幸福ではない事を示しています。最初に結論が描かれていますが、最後まで一気に読みとおし、ゆったりとした感動が味わえます。静かに海辺で読みかえす書として最適でしょう。