ここ最近読んだ中ではもっとも夢中になって一気に読みきった書物である。例えば死を迎える他者を前にして一緒にいるとはどういうことか、など身近に遭遇する場について我々が通常抱いている考えとは異なる考えを提示する。しかしながらそれらはどれも我々がうすうすそうと感じているものばかりなのである。言葉を使って考える行為により漏れ落ちてしまうさまざまな「noise」を復古しようとする試み。言葉で考えるのでは汲み尽くせない「世界のざわめき」に耳を傾ける試み。彼は言葉を「もともとものを讃えて力を与えるために発したもの」としているが、彼自身の言葉がさまざまな感慨を我々に呼び覚まし、力を与えている。時々論理だけが突っ走ることもあるが、後で読み返してみて筋が通っている。こむつかしい思想書というよりさまざまな感慨を我々に提示してくれる詩のような書物である。その一方で論理の飛躍を排し、一つ一つ丁寧に説明する姿勢も兼ね備えている。そして何よりも説得力があり、それは世界各地にしっかりと身を置きものを感じたリンギスならではのものなのだろう。書物の中にはいくつも心をうたれるフレーズがある。挿絵として入っている彼自身が撮影した写真のメッセージもすばらしい。