この本の中には、2人の日垣隆がいる。1人は、どうしようもなくショッピングに取りつかれている日垣隆。グアムでは、前から欲しかったというルイ・ヴィトンの付箋紙入れ6万3000円を見つけて即座に購入。べトナムでは熱にうなされながらも、高級宝石店でアクセサリーをしこたま購入。深夜のテレビショッピング番組や通販ダイレクトメールを見て、さっさと購入。
もう1人は、サービスの品質に対して敏感な日垣隆。国際線の飛行機でビジネスクラスを予約するにしろ、JRのグリーン車に乗るにしろ、それらのサービスが価格と比べて妥当だと判断すれば、彼は進んでそれを享受しようとする。だから、料金に対してサービスの品質が劣る(あるいは裏切られる)ことがあれば、彼は容赦なく怒る。しかも感情的にでなく理路整然と。たとえば本書後半のタヒチ旅行で、彼が見せた怒り。そこには読者を引きつけるだけの理屈が通っている。
日垣隆といえば、『偽善系』、『少年リンチ殺人』などを著した硬派な論客である。彼は、自ら「買う」「消費する」ことを通じて、その値段、品質、流通制度、サービスの中身を鋭くえぐり出し、その実態を読者に提示する。その姿勢に、読者は共感し共振するだろう。(文月 達)
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