初期の有名な作品が多く含まれる、森山ファンなら手に取るべき名写真集。「アサヒカメラ」の連載企画で日本各地を旅しながらカメラで切り取ってきたイメージの断片が物凄いスピード感とパワーで迫ってくる。粗い色見が高度成長期の如何わしさ、日本の土着的な風土のドロドロした感じ、猥雑な生命力などと完璧にマッチしているのも見事だ。
粗暴に何となく各地の風景を撮りまくっているようで、撮るシチュエーションを逆想してみると意外な程に作り込まれたシチュエーションの作品も混じっているのが面白い。例えば、表紙の作品とか偶然出会うことは絶対あり得ない構図だし、わざわざ被写体の人物を立たせて足だけ撮ったりとか、そうかと思うと延々と旅先で出会った女性のポートレートを撮り続けた回があったりとか、若き日の作家が「何か今までと違った写真を撮ってやろう」というアイデアを探し続けているような汗がこの写真集からは感じられる。前述の女性ポートレートを撮り続けたシリーズ(「高山の女」)なんて、アイデアが沸騰しなくて苦し紛れに撮ったんじゃないかという裏読みさえできるんだけど(笑)、そういうテンションの波すらも成長中の作家の勢いを感じるというと、ファンの強引な贔屓目になってしまうだろうか。「何かへの旅」とは結局、若き作家の「新しい写真を撮ろう」というアイデアを巡る旅だったのかもしれない。