佐野さんの希望で初顔合わせとなった、武蔵美出身者三人の対談集。
2007年の西原さんとの対談では、佐野さんは頼もしくも饒舌だ。「生きてること自体はたいしたことないのよー」という言葉から窺える死生観、「お母さん嫌い」は実は沢山いるという家族論、二度目の結婚の詳細から恋愛・結婚論、絵本作家になるまでの経緯など、耳よりの話題が多い。
そして、西原さんのスゴイ半生に対し、何度も「負けたわー」と嘆いてみせても、「自分を支えているのは、怒り」と言いきるパワーはちゃんとある。
ところが、2009年11月のリリーさんとの対談では、ずっと寡黙になっている(実はベッドに臥せた状態であり、後に予定されていた対談も実現しなかったという)。
リリーさんの、親の話をしてくれる年長者の顔が「なんだかいとおしく見えてきて」という言葉に応ずるように、老いた母を見ているうち「人生の中で、たどり着ける''優しい気持ち''」に至ったと佐野さんが語る場面ではじんときた。佐野さんはとても優しい人だった。
唯一の教育方針が「息子をニートにしない、娘を売春婦にしない」だというパワフルな西原さんと、「十分にお母さんに愛されたって感じがしてるでしょう」と佐野さんに言わしめたリリーさん。かなり対照的な対談相手だが、話題が決して死から離れない点には圧倒されっぱなしだった。
対談場所は佐野さんのご自宅。すっきりした室内に、タバコ片手の談笑風景。笑みこぼれる数枚の写真は、それを見るのがうれしいような悲しいような……。戦前・戦後を、大人の世界と子どもの世界の両方で生き切った女性の、見事な幕引きを感じさせる対談集。