読んでみて、素直に人に勧めたくなった一冊。
最初は、この著者に対して大いなる偏見があった。
つまり、自分の才能一つでのし上がった人特有の、自我の強さに満ちた人種なのではないか、という。
ところが、いざ読み始めてみれば、そのフランクで柔らかい語り口に、自然しぜんと引き込まれてしまった。
しかも、そこに書かれている内容は、なかなかのもの。
伊達に「気鋭のアートディレクター」を張っているわけではないな、と思わせられた。
書名に「超整理術」とあるのは、「単なる環境整備のことだけを言っているわけではない」という意味合いで「超」が付いている、と考えてよさそうだ。
「空間の整理」「情報の整理」「思考の整理」と三つに分け、大切なのはプライオリティーであり、視点の導入であり、思考の情報化である、と説かれている。
何より感心したのは、はっきりと語られていたわけではないが、この著者の考え方の奥にあると思われる、「自我を去ることが仕事の成功につながる」という思想。
もっと、「自分はこう表現したい」と強く押し出す形で成功してきた人なのかと思いきや、自分を表現することよりも、クライアントの求めるものを正しく汲み取り、それに寄り添う形で自らの才能を投入することにより、その仕事のあるべき姿が実現し、そこにあるべき成果が伴うに至る、といった哲学の持ち主であるように見受けられた。
真の意味の自己実現とは何かが端的に語られており、特に芸術系の道で身を立てようと志す人にとっては、非常に参考になりそうだ。
結局、「自分が、自分が」と思っているうちは大したものは生み出せず、自在に視点を変換させ、ある時は受け手の立場に立ち、ある時は受け手をも超え、俯瞰した立場で捉える、といったことが、価値のある何かを生み出すためには必要不可欠なのではないか。
そのようなことを改めて考えさせられた。