本書は、組織変革等に際して、如何に組織変革の理念や方法論を浸透させていくのか、その「変革浸透のための」方法論を説くもので、概念的には「チェンジ・マネジメント」の分野に組するものと思います。
組織変革や周囲の環境を変えようとする時、我々の多くは変えたい物事・事象に対して「直接的」に働きかけようとしがちですが、その際には多くの「抵抗」が生じます。「伝動戦略」とその骨格である「非対立的アプローチ」は、意見の相違・対立点に拘泥せず、また、その抵抗の源になる集団等と対峙するような真似は避けることで、一見悠長に見えても結果的には効果的な浸透が図られると提示します。簡単に言えば「将を射んと欲すればまず馬を射よ」であり、「西洋医学よりは東洋医学」というになりますが、現実にはなかなか上手く実施できないものです。
本書は、この「どうすれば上手く馬を射ることができるか」の考え方を提示しており、中心的な方法論は、「玉突戦術」「集中的拡大戦術」「誘導戦術」の3つに集約されていますが、バックグラウンドの中心概念はシステム・アプローチです。こうした考え方は、組織変革にあたる人だけでなく、対人的な仕事に就く方全てに有効だと思います。
個人的には、こうした非対立的アプローチやシステム思考を取り得ないビジネスパーソンが多い理由には、構造的に物事を捉えるのが下手だということも然ることながら、功を急ぐ精神的な弱さや自意識過剰もあるのではないかと思います(私がそう)。また、逆説的に言えば、「変革したいが自分が前面に出るのは嫌だな」と思う人には特に有効なアプローチかもしれません。
なお、本書のシステム的思考態度については、『システム・シンキング』(日本能率協会マネジメントセンター刊)や『最強組織の法則』(徳間書店刊)が大変参考になります。また、『非対立的』な対人態度については『実践・交渉のセオリー』(NHK出版)が大変便利な参考図書となります。