毎回作品で内外の小売り流通業の実態を読者にわかりやすく教えてくれるノンフィクション作家加藤鉱さんの最新作。加藤さんは21世紀の小売流通業の潮流を3つに集約しています。1つは、ワールドワイドにチェーン展開するジャイアントリテーラー。1つは、インターネットを使ったウェブショッピング。そして最後の1つは、ネットワークビジネスであると喝破しています。
ディストリビューター(販売者)自らが製品の愛用者となり、その製品の良さを口コミ(word of mouth)でセールスしていくのが基本。さらにその商品を買ってくれたお客をディストリビューターとしてリクルートし、自らの販売組織を広げるというのがネットワークビジネスのビジネスモデルです。
加藤さんは毀誉褒貶の多いネットワークビジネスのなかにもヘルシーな企業があるとしてタヒチアンノニ社を俎上にあげ、本来のネットワークビジネスのあるべき姿を同社に見い出しています。
もっとも読み応えのあるのが、各ディストリビューターの葛藤が描かれた章です。これを読むと、「本当によい商品であれば、消費者に製品を届ける方法はなんでもいいはず。その製品の価値を最大限にアピールする方法がマス宣伝だったから、従来はその方法を採用していたにすぎない。ネットワークビジネスは流通の一つの手段であり、条件さえ整えば、これほど理想的で無駄のない流通形態はない」ということがとてもわかりやすく伝わってきます。
実は自分は、ネットワークビジネスと聞くと反射的に顔をしかめてしまうほど毛嫌いしていたのですが、それがいかに偏見に満ちたものであるかに気づかせてくれた1冊となりました。みなさんも学んでください。
ありえないことですが、もしタヒチアンノニ社が日本に上陸した最初のネットワークビジネスの会社だったとしたら、日本でのその後のネットワークビジネスに対するイメージはかなり違ったものになったでしょう。