零細企業や個人事業主が金融機関からの借入れから逃れ、どのように生き延び事業を再生
するか、著者の経験に基づいた方法論を詳細に記述されている。
内容は有担保の債務者が債務免除を獲得するための方法であり、金融機関の債権管理の
実情からみると手法として適合するケースもある。
また不動産担保融資のノン・リコース・ローンの拡充や、個人の連帯保証人をやめるべき
との提言など、国内の金融慣行の改善提案として首肯できる内容もある。
反面、本書に記述されていないマイナス面も決して小さくはない。
本書の内容では、債務者は将来長期間、金融機関と融資取引ができなくなる可能性が高い。
このため極端な解決策で当事者が長年築いてきた信用を一挙にクリアしてまで金融機関
と対峙することが本当に得策なのか。
また再建の可能性の乏しい事業主が現在の金融機関を切り捨て現金商売に徹したとして、
現在の事業が商売として本当に成立するのか。
金融機関との取引が難しくなれば、いきおい街金融や裏金融を利用する企業や個人事業主
も出てくることは容易に想像される。
ドラスティクな手法ゆえに副作用も半端ではない。
効果ある薬でも使い方を誤れば劇薬にも毒にもなる。
金融機関との取引で容易に借り入れできない状況に至った企業や個人事業主の悩みを
解決するには、現在の事業内容や需資原因、銀行との取引状況、担保など、多面的に
分析検討し、第三者から見たアドバイスをもとに当事者が判断することが必要である。
タイトルは魅力的だが、本書に書かれた内容で読者が有効と判断できる事例は限定される。
また本書の様な行動を多くの金融機関利用者が取るような事態になれば、どこの金融機関
も現在のような融資は行えなくなる。
金融の本質は、利用者と金融機関の間の信頼関係だ。悪貨が良貨を駆逐するような行動が、
究極的に悪貨を利するようにはけっしてならないだろう。