副題に贋作とあったので、わたしは、里見八犬伝に感銘を受けた著者が、
「私もあんなの書きたい!」と思い立ち、里見八犬伝風に書いた如何物なのか
と思ったが、そうではなかった。
本書中における現世(江戸時代)には、人間と伏と呼ばれる人間と犬との
あいだに生まれた存在が共存する。
しかし伏は、人間に害を及ぼすとして、掃滅の対象となってしまう。
「贋作・里見八犬伝」とは、本書中での史実、伏達のルーツを記すもの。
里見八犬伝の作者である滝沢馬琴の息子の手によって、書き綴られていく。
物語は主に、人間vs伏の攻防を追って展開する。
読後の全体的な印象は、おとぎ話のような世界観でとても心地よかった。
その余韻から抜け出すのが、惜しいような感じ。
それに、原作さながら擬音語が多用されるせいか、漫画を読んでいるときの
ような茶目っけが感じられ、軽やかでさわやかで良かった。
なのだが、わたしは原作・里見八犬伝ファンなのである。
伏姫と八房(犬)との交わりにより、子孫が産まれたという設定には
大いに抵抗を感じた。
原作で伏姫は、人畜異類の定めを侵すことを、何よりも忌み嫌う。
また、原作と同名で質の異なる登場人物にも混乱した。
そういった主観的難点はあったのだが、以上を差し引いても、
読み物としては十分楽しかったので、★は多めにつけておいた。