2009年3月に逝去した伊藤計劃氏の残した発表された長編以外の文章を集めた本。彼のファンとして、発売と同時に購入したんだけど、惜しくて今まで読めずにいた。
収録されている作品は、
まず小説として、
「The Indifference Engine」
「セカイ、蛮族、ぼく。」
「From the Nothing With Love」
の3篇の短編と、未完の長編、「屍者の帝国」。
このうち、「セカイ、蛮族、ぼく。」以外の作品は既読。「セカイ、蛮族、ぼく。」を読めたのが嬉しかったが、やはり作品としては、未完に終わった「屍者の帝国」が惜しくてならない。この作品が完成したら、どのような恐ろしい作品になったのだろう。このわずかに残された序章ですら、傑作の予感がする。ギブスン&スターリングの『ディファレンス・エンジン』をこよなく愛した伊藤計劃が書いたスチームパンク、読んでみたかった。
そのほか、彼のメタルギアソリッドについての文章もはじめて読んだし、そして有名な映画評もはじめてだったので、ファンとしてはとてもうれしかった。
ファンと言いながら、出版された小説のみを追いかけていた身としては、もう少し、ちゃんとリアルタイムに彼の文章を追いかければよかったと悔やんでいるが、この本によって読むことができたのは本当にありがたい。
早逝したことによって、その評価が高まったといわれるのは、生前の評価がむしろ低すぎたと思うファンとしては心外だが、彼の残した小説や文章が改めて読まれるのは、素直に喜んでおこう。
2011年3月には、この全記録の第二弾も出されるようだ。彼が残した文章を噛みしめるように味わっていきたい。