伊藤真と言えば憲法、刑法、民法といった各種の法律の分かりやすい入門書で有名な人だ。しかし今まであったのはそういった「○○法入門」だけで「法学」そのもの、「法」そのものの入門本はなかった。私にはこれは少しく意外な事だった。図書館で初めて本書を見つけて読んでみた。とても分かりやすく読みやすく、法とは何なのか、法と道徳の関係、法の歴史、法の学び方、法的思考とは何か、法と正義、法の種類、法の目的、法の解釈、裁判制度、法律文書の書き方…など根本的で哲学的な事を含めた興味深い法の話が沢山なされていて、さらに著者独自の立場も見えてそれがまた面白い。こんな良い本はそれこそ沢山の「○○法入門」を読む前に最初の一冊として読んでおきたかった。何故今まで目に入らなかったのだろう。そう考えて出版年を見てみるとなんとこれは去年(2010年)にやっと初めて出版されたものだったのだ。今後法学を学ぶ人達は最初の一冊目に本書を使う事ができる。それは幸福な事だと思う。
私が「最近、伊藤真の法学入門を読んでいるが、彼が法学入門まで出しているとは知らなかった。それもそのはず、これは最近書かれたばかりなのだ」といった事を言うと「えっ、伊藤真といえば法学入門だと思ってました!」と反応する人がいた。既述のようにこれは「○○法入門」としての法学入門と、「法そのもの入門」としての法学入門の違いである。言うまでもなく法学の入門書を書いているのは伊藤真だけでは全くない。法学入門は数多くあるがそれにも二種あって、一方は諸々の○○法の入門的知識を広く浅く紹介するもの。もう一方は私の言う「法そのもの入門」とでも言うべき内容をしている。(ただし、どちらかに重きを置きつつ両方扱うというものが実際は多い)この後者の方には団藤や伊藤正己の入門本が入るが、実はこの伊藤真の法学入門も後者に属する。その内容は既に述べた通りである。「根本的で哲学的な事を含めた興味深い法の話」と書いたが実際この法そのものへの入門は、ある意味で法哲学への入門と言っていい内容をしている。それは法とは何か、法と道徳、法と正義、法の正当な解釈…といった本書の話題を見ても分かるはずである。となると、本書はあの伊藤真があまり深い形ではないとしても法哲学を語っていると見てもいいような本で、元々法哲学が大好きで、伊藤真にも興味のある私としては、大変興奮を誘うものだった。そう分厚くない頁数に沢山の内容を盛り込みながらも不思議とそれぞれが適当になっているようには感じない。お薦めの法学入門である。