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伊勢神宮 魅惑の日本建築
 
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伊勢神宮 魅惑の日本建築 [単行本]

井上 章一
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

神宮はいかにして日本美の象徴となったのか 明治初年、「茅葺きの納屋」とされた伊勢は、20世紀に入り「日本のパルテノン」として世界的評価を受ける。民族意識、モダニズム、建築進化論の交錯を読解する

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

井上 章一
1955年生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。同大学院修士課程修了。現在、国際日本文化研究センター勤務。歴史家、評論家。著書に『つくられた桂離宮神話』(サントリー学芸賞)、『南蛮幻想』(芸術選奨文部大臣賞)など多数ある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 562ページ
  • 出版社: 講談社 (2009/5/15)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062154927
  • ISBN-13: 978-4062154925
  • 発売日: 2009/5/15
  • 商品の寸法: 19 x 13.8 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By JK
形式:単行本
 呼んでビックリ。実に意外な面で痛快な一書でした。タイトルにもあるように著者自身も伊勢神宮に魅せられているのでしょう。ただ世の中が伊勢神宮に魅せられるその背景に、かなり意図的な部分があり、学問的には相当に問題点がありそうだ、という立場から、実に丹念に文献にあたりながら、痛烈に学者や学会を批判している書なのです。ある意味「学者」のあり方批判を展開している書ともいえます。このことは「学問」の「科学性」を第一に考えようとする著者の真摯な主張が、「学会」からは無視され続けているという点を考慮すると、若干エキセントリックな批判に過ぎるという面はないではないのですが、十分に許容される範囲の主張、批判と私は理解しました。
 「伊勢神宮は20年に一度の式年遷宮により、1300年以上昔の形状を変えることなく現代に伝える日本古来の建築美の頂点である」等の称賛がよくなされます。ただ著者によれば神宮には回廊や勾欄がめぐらされ、妻かざりには法隆寺と同じ細工がほどこされ、社殿配置は対称的で薬師寺を思わせる等、仏堂めいたところもあり、大陸風、中華風の要素が確実に届いている、とのことです。著者はこのような組み換えが桓武期(桓武天皇在位781-806)に生じた、と想像しています。これ一つをとっても一般的に伊勢神宮に寄せる印象とは違います。この一般的な、こうあって欲しいという印象に、実証的であるべき学問が左右されていると著者は指摘しています。
 自らの学問に対する姿勢を正す意味からも実に意義深い一書でした。
このレビューは参考になりましたか?
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 空満
形式:単行本
 伊勢神宮は大多数の日本人にとっては特別に神聖な存在である。見方を変えれば、逃れがたき呪縛である。本書『伊勢神宮』は、建築として神宮について語られてきた近世以後の言説を博捜・検討して、客観的で実証的とされる近代の建築史学や考古学においても機能するこの呪縛を解き明かす。
 神宮の神明造りについては、日本の古代建築が引き継がれてもっとも古いタイプの神社であるという一般的なイメージを私も持っていたのだが、こういうイメージ自体がまさに「作られた」ものであることが、本書によって分かる。
 創建された時の社殿は現在の姿と変わらないのか。神明造りは日本独自に発展したものなのか。東アジア、東南アジアに見られる高床式、棟持ち柱、千木のある民家と神明造りとの関係はあるのか。これらのテーマをめぐって、東大の建築史学が国粋派とでもいうべき立場にこだわったのに対し、京大の建築史学が国際派の主張をもって対立した。学説の対立・葛藤は学者世界の人間くさいドラマも伴っていて、このあたりの好奇心そそる叙述は著者の面目躍如といった感がある。京大建築科出身の著者は、東大派に対してやや過度の皮肉を効かすが、これも著者の持ち味なのだろう。
 批判は、弥生時代に神殿があったという説に及ぶ。弥生時代の地層から棟持ち柱の跡が見つかるようになり、80年代からこれは弥生の神殿であるという憶測が語られるようになった。憶測であったものが、現在では有力な説になるまでに到った要因に、伊勢神宮の呪縛がある。詳しい内容は本書を読んでもらうとして、弥生の神殿は既定の事実のように考えていた私には驚きだった。新聞の発掘記事などの解説やコメントを通して、この説はいつの間にか頭に刷り込まれていたようだった。考えれば、マスコミのセンセーショナリズムに乗せられて「発想やイメージを重んじるようになった」考古学が振りまいた幻想であったのか。
 池上曽根遺跡に復元された「大型高床式建物」をめぐる問題点を扱った最後の章も非常に興味深かった。限られたデータから復元する古代建築は、復元担当者の建築史観や施主である行政の意図によって大きく左右される。その生々しい実例が関係者の発言を中心にドキュメント風に構成されて、問題点が呈示される。各地の史跡公園に復元された建物を見る目も、これを読めば無邪気な感嘆だけで済ますことはできなくなるだろう。
 井上氏の読者であるなら、馴染みのスタイルの言説史・学説史批判であるが、本書においては批判ばかりではなく、著者の説が打ち出されていることに特徴がある。空想であると自ら断る説は、定説・憶説を批判する鋭い舌鋒からすればずいぶん控えめであるが、それでもやはりと言うべきか他の逆をいく説であった。
このレビューは参考になりましたか?
18 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
「反省をせまりたい」
「直接面会をもとめ、話を聞いている」
 著者はあるときは、卒業後に教授を訪ねていって、その教えを難詰する弟子のように、またあるときは、帰り際の質問で犯人をじわりじわりと追い詰める刑事コロンボのように現れる。「あとがき」で語られるような悲壮な決意に満ちたいつもと一味違う井上章一がここにいる。
 著者が追いかけるのは伊勢神宮について、ここ三百年ほどの間に発せられてきた言葉の数々。伊勢神宮について知りたいという人が手に取ると、なんだこれは? ということにもなりかねない。でも、伊勢についての著者の考えも述べられているし、それがどんな建物なのかもちゃんと書かれているので、ご心配なく。
 この本の醍醐味は伊勢神宮に対して、日本人がどんな夢を抱いてきたのか、を一気に読ませるところにある。かなり大ざっぱに要約してしまうと、日本人が伊勢に見出したかったのは、日本的建築の起源だ。その思いがあるから、伊勢が東南アジアや南洋の人々の住居に似ていると知っても、ごく普通の高床式の倉庫に似ていると知っても、建築史家はそれらの事実を見て見ぬふりをしたり、それらを踏まえつつも、日本的建築の起源は伊勢にありと強弁しようとしてきた。
 たとえば、実証的だと言われてきた教授までが、今の伊勢神宮が日本固有の建物の「原初の姿」を保存しているとしたいがために調査の数字を改めていたことが明らかにされる。その顛末を追う執拗で緻密な文章にはぐうの音も出ない。
 また、モダニズムを標榜する日本の建築家が伊勢のシンプルで質素なデザインを日本的なモダニズム建築を作るために必要とし、参照してきたことがすっきりと腑に落ちてくるのにも驚いた。伊勢〜桂離宮〜モダニズム建築という、伊勢を褒めちぎったブルーノ・タウトの図式を援用して、あれやこれやの建物が日本中に建てられていることが頭に浮かんできて、腹のあたりが興奮する。
 漢心(輸入品)に犯されていない純度百パーセントの「日本」なんてない、「日本的」なるものは、漢心の輸入と抑圧が行われた後に事後的に見出されるほかない、と言いたい人々にとっては、強い味方がまた見つかったと思うかもしれない。でも、井上の必死の格闘をそう簡単に一冊の本の代金で買ってしまっていいのだろうか。読み終わったら、「日本」と「起源」を自分の内外に見出したい密かな欲望と十分に戦ってみろ、とこの本は読者を唆す。その熱にうかされる。
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