人生において勇気をもらいたい時、修羅場に陥いり這い出さなくてはいけない時、必ずこれを見る。
洋画を観て薄っぺらーく「何となく分かったような気になる」くらいなら、伊丹映画を繰り返し何回も観た方が、人として賢い。
日本映画のコメディーで本当に笑わせられたのは、伊丹十三の映画だけだったようにも感じる。
結局、人間考察のリアリティーの度合いが違うのだよ。
宮本信子の脇の下のたるみ、山崎努のポマードから漂うおとこの色気、西村雅彦と村田雄浩のクドサ満開のイジリ方、津川雅彦の丸出し助平・・・。本当に役者の使い方が分かっていた監督が、また一人いなくなった。
伊丹映画の特徴は、バタ臭く、アクが強く、洗練なんて全然されていない。
いい意味で「東映やくざ映画」「日活ロマンポルノ路線」の系譜にある昔ながらの作り込む作風であった。常に現代のタブーや体制を、人間の心底にある欲望と好奇心でもってコメディー形式で分かり易く描き出した。
どの作品も一貫して、観た後の引っ掛かりが違う。そして、しつこい。
伊丹十三とは、まだデジタル化されていなかった「昭和の最後のいい男」だった。
彼が世に生まれて好きな映画を撮らせてもらい、最後に「ホントに撮らなきゃいけないものを撮るだけ」だったのが、この作品だったとは思いたくない。