愛する2人が結ばれるまでに、出会いがあり、お見合い、婚約、身上調査や結婚式があるように、企業にも合併・買収に到るまでにデューデリジェンス、正式調印などありますよ、と結婚に喩えてM&Aを解説する。著者が冒頭にライブドアのニッポン放送買収の話を出したように、日本ではM&Aが依然として「敵対的買収」として見られることが多いが、実はほとんどのM&Aは結婚同様、相思相愛で一緒になることがほとんどだ。写真ではこんなきれいだったのに、実物は…みたいなことがあるように、企業買収でも法律違反で莫大なつけを払わされることを知らずに一緒になってしまった、家事が何でもできると思っていたら親にやってもらっていた…みたいに、優れた独自技術を持っている他社の子会社を買ったら、その技術は親会社のものだったとか。婚約中に浮気をしたために、「一緒にならないなら弁償しろ」とUFJを訴えた住友信託。人も会社も一緒になるときは似たような苦労があるものだ。
著者の挙げる具体的な事例の多くが2007年以降の比較的新しいもので、著者が第一人者であることもあるが、よく現状を見て、整理できている。結婚に喩え、出会いから別れまで流れを追って解説するという着眼点も優れていて、会社法や会計論などがからむ、この手の本にしては非常に分かりやすくまとまっていて読みやすい本だった。世界金融危機以前は毎月のように企業買収の新書が出ていたものだが、ここ2,3年はぱったりだった。こうした本が出てくるということは景気復調のトレンドなのかも。