本書の論述は、先行研究のレビューに基礎づけられた、アカデミックに健全なものである。が、記述は平易かつ説得的で、よく練られている。夥しい数の戦略事例が挿入されていて、それもおもしろい。内容は、「戦略とは何か」「パフォーマンス(成果)とは何か」「脅威および機会の分析」「企業の強みと弱み」の分析で構成されている。
この巻は文字どおり基礎的な議論に充てられており、RBVの特色が一貫して出ているわけではない。例外は「企業の強みと弱み」を論じた第5章だ。企業の強みと弱みは伝統的な議論で頻繁にとりあげられてきたが、この章では明確にRBVの観点から、価値(V)、稀少性(R)、模倣可能性(I)、組織(O)の4要素でそれを分析するVRIOフレームワークが提唱されている。またVRIOを用いた例として、デル(パソコン)とソフトドリンク業界に関する秀逸な分析も出ている。本書の最もおもしろい箇所である。
本書は3巻本の邦訳の1冊目だが、それでも300ページを超えるボリュームだ。それほど議論は包括的・体系的で、多岐にわたっている。概念的説明だけでなく事例も多く、論述はサービス精神にあふれている。標準的なテキストブックの執筆に著者が驚くべきエネルギーを注いだことが分かる。これは要するにプロが書いたテキストブックである。アメリカのビジネススクールが日本で通常考えられているよりアカデミックな性格が強いことを、読者は本書から感じとるだろう。(榊原清則)
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26 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
すごい切れ味だ!,
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レビュー対象商品: 企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続 (単行本)
上巻は、戦略を考える上で、企業環境を分析するツールの解説です。戦略とは何か、組織のパフォーマンスに関わる、数々の説。 SWOTというのは、どのようなツールなのか、どう使うのか?その限界。そして、SWOTの各要素(機会、脅威・・)を分析するためのツールとしての、ポーターの理論の説明、限界、事例などです。 各学説、概念、などの経営学上での位置づけ、考え方の肝、などが分かりやすく整理されてます。ある程度知っているつもりでしたが、「目からうろこ」的な所が、かなりありました。切れる人が、わかりやすく書いた本という印象です。切れ味抜群。 読みやすいし、詳しいし、お勧めです。かなり得した気分です。
17 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
中巻は、レベルもUP,
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レビュー対象商品: 企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続 (単行本)
中巻も、気合入ってます。垂直統合、コストリーダーシップ、製品差別化については、それが、どのような考え方なのか、それぞれの戦略が、なぜ、どうすれば、競争優位に結びつくのか、競争優位が築けるのか、それぞれの戦略のリスク、戦略を遂行するための組織は?が詳しく分析されています。資源ベースの視点から、例えば、差別化を行うには、このような資源が、有効だ!というような分析です。 柔軟性は、ほとんど、リアルオプションの説明でした。リアルオプションそのものの説明、必要性、なぜ競争優位に結びつくのか?等です。 談合の章は、ゲーム理論が元になった話だと思います。これまた、経営資源との関係、競争優位との関連等が書かれています。 談合の章が、若干薄めで、あとの章は同じぐらいのボリュームです。 上巻よりも、狭く深い内容になっていて、上巻より、読むのに苦労しました。中巻からでも読めますが、上巻から読んだ方が、考え方のつながりがわかって良いと思います。 練習問題がついていて、これまた、うーんと考えさえる良い問題だなぁ、という印象です。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
戦略論の体系的テキスト,
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レビュー対象商品: 企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続 (単行本)
経営学、MBAの発展に伴い今日はあまりに多くの戦略論が存在する。ポーターやミンツバーグは戦略論の中でも屈指の著名人であるが、この両者を比較してもあまり共通した意見を言っているようには思えない。 では数多の戦略理論からどれをどのように用いるべきか。各名著を真剣に読むことである程度理解できるはずであるが、そのためには莫大な時間が必要である。 そのような時に重要なのがその莫大な文献をうまく体系立ててまとめているテキストであり、本書はその中でも群を抜いたテキストである。 多忙な方は本書を読めばこれまでの戦略論に関する基礎は十分であろう。 著者は内部資源アプローチ(RVB)の権威であり、本書もそれに則した作りとなっている。 内部資源アプローチとは企業の強みや弱みを活かして経営環境に打ち勝つ術を論じるもの、すなわち企業の経営資源に競争優位の源泉があるとしたもの。 これはポーターに代表されるポジショニングアプローチ、直面している経営環境から戦略を導き出す、つまり市場環境の中に競争優位の源泉があるとしたものとは異なる戦略論のように感じる。 しかしRVBは企業の強みを用いて市場に対処する方法、ポジショニングは市場に合わせた対処を論じるという関係があり、環境に対する二つの対処方法という意味で補完関係にあるといえ、本書でもポジショニングと内部資源の関係がわかりやすいようにまとめてある(理論的基礎は上巻)。 特に企業の強み、弱みに関した分析にVRIO分析(RVB)、企業の機会、脅威に関した分析に5forces(ポジショニング)を用いた分析を行って各目的毎に分析を行っており、戦略論の主流がどのように組み合わされるべきかを読み解くことができるであろう。 また戦略と言っても全社戦略や事業戦略といった分類があるが、本書は中巻で事業戦略、下巻で全社戦略についてまとめてあり、従来の経営者向け、事業部向けといった一部の人に対したテキストではないことも注目に値する。 もちろん莫大な戦略論の文献をたった一つのテキスト(とは言っても全900ページはあるわけだが)でまとめきることは不可能で、たとえば先にあげたミンツバーグの戦略論のようなものはあまり含まれていない。また当然ではあるが、近年注目されているダイナミックケイパビリティに関する言及はない。 このような欠点があるとは言え、数多の戦略論の中でも最も体系立てられた分野に関して言及しており、戦略「理論」のテキストとしてこれ以上優れたものは無いであろう。 言及した不足なものはこれを読んだ後補えばいいと考えられる。 最後に一点。まったく戦略論を知らない人が読むと分量に圧倒されてしまいかねないので、基礎的な戦略論もしくは経営学のテキストに目を通したことがあることが望ましいと思えます。
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