その要諦は、「株主価値経営」と「コアとコンテクスト」という2つのキーワードに集約できるだろう。株主優先の経営や、経営資源のコア業務への集中、それ以外の業務(コンテクスト)のアウトソーシングは、これまで盛んに論じられてきたテーマだが、ここでは「株価を上昇させる業務こそが、会社のコア業務」ととらえるなど、株価とコア業務を密接に関連させて論じている。
第1章と第2章では、そのコア業務への資源集中こそが競争優位性を高める方法であり、株価こそが競争優位性を測定するものだといった経営価値に関するテーマが論じられている。ここでは、ビジネス界で新しく起きている変化が数多く検証されているが、なかでもコア業務に特化した複数の優良企業が集まり、バリューチェーンを形成していくという経済の潮流を指摘した点は注目だろう。
3章以下の章では、インターネット時代の競争優位性の特質やその進化の様相、また大企業が突如競争力を失ってしまう市場のメカニズムやその対処法などが論じられている。対象はハイテク業界であるが、「競争優位性を生みだす五つの層のモデル」「企業カルチャー別にみた競争優位性確立の手法」といった処方箋は、一般の企業にも十分当てはまる。
日本でもITバブルは沈静化に向かっているが、その波が残した「バリューチェーン経済への移行」といった構造的変化は、旧来の大企業にとって今後の命運を決する大きな経営課題である。それを乗りきるための確かな指針と処方箋が、ここに示されたといえるだろう。(棚上 勉)
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