20世紀の日本経営学においては、「失敗の本質」が優れた経営学のケーススタディだったといってよい。その後、日本的経営の「成功」を賛美する書籍が多く出た。しかし、それらの書籍の多くは、これまでの経営理論を繰り返し論じるか、これまでの研究を体系的に整理するか、わけのわからないカタカナ用語で煙にまくか、といったレベルにとどまっているのが実情だ。本書籍は、そのような日本経営学の現状を打破する可能性がある書籍内容に仕上がっている。具体的には、最先端を行く新制度派組織論を理論基盤としつつ、防衛産業、エレクトロニクス産業、パイプライン産業、電力産業、金融産業、監査産業など多彩な産業について、全体の最適と個別の最適が不一致するという不条理現象に焦点を当てて、冷徹な視点で徹底的に分析している。ここでいう新制度派組織論は、ノーベル経済学賞を受賞したコースやウィリアムソンといった論客を主軸に発展している理論体系である。編著者は、新制度派経済学を代表する研究者である菊澤研宗(慶応義塾)であり、彼はあの野中郁次郎と入れ替わりで防衛大学に教官として着任したことで知られる。菊澤氏は、これまでの著書において「組織の不条理」といった旧日本軍の失敗を扱ったユニークな書籍など、多数の研究成果を発表している経営学の重鎮であり、新たな日本経営学の旗手となりうる逸材だ。―――総じて本書は、21世紀の失敗研究として、経営学を学ぶ大学生、経営学研究者、新制度派に関心のある経済学研究者、防衛産業、エレクトロニクス産業、パイプライン産業、電力産業、金融産業、監査産業などのビジネスマン、これらの人々にとって必読を推薦できるといってよいだろう。