この作品の魅力は、渋みのある人間ドラマと、少しの謎解きです。
登場人物の誰もが一癖も二癖もあり、それぞれが胸に秘めた“何か”を
抱えて生きており、それは、この物語を紐解く主人公も例外ではなく、
いわゆる“ワケあり同士”の共感性のようなものと、“日常とほんの少し
ずれた空間にいる”という心理作用を巧みに利用した、絶妙な構成と
展開に惹かれました。
セピアとモノクロームの世界観の中で繰り広げられる一連の物語は、
時に切なく、時にスリリングで、時に心あたたまる、色彩溢れるもので、
ドラマの背景を彩る懐古的な時代設定や、ジャズやボッサ、ブルースなど
ジャンルの多彩なBGMも、これらのドラマに華を添えており、作品をより
素晴らしいものにしています。
そして、作画も非常にシンプルながら、鉛筆画のようなあたたかみのある
タッチも魅力的です。
ただ、次に何をするのか、どこに行くのか、あまり明確に示されない分、
若干迷った箇所はありましたが、ホテル内の雰囲気と音楽を楽しむ事で、
私はあまり苦にはなりませんでした。
謎解きも物語を盛り上げるスパイスとして絶妙で、過度に難しい謎解きは、
プレイヤーの意識を、物語の本筋から遠ざけてしまうような不粋なものに
なりえますが、本作での謎解きは、特別ものすごく難しいと感じたものは
なく、やや難しく感じるものがあったとしても、常識的に物を考えれば、
そして、ある程度の根気があれば解決できるような、バランスの程よい
難易度だったと思います。
また、DSならではの機能を使った、斬新な謎解きが多く見られた事も、
メーカーの前作「アナザーコード」未体験の身としては、非常に新鮮で、
面白さを感じました。
続編が出るなら、是非ともプレイしたい、そう思わせてくれる作品でした。
センス溢れる“大人のための作品”、是非とも手にされてみてください。