原作と雰囲気が違いすぎる。
原作のユーモアが抜け落ちてしまって面白くない。
初夏のうららかさに出奔してしまったえらくお気楽な破戒坊主の主人公が、映画ではやけに辛気くさく、救いを求める罪人のよう。
原作では強引に一座を引きずり回す激情家のマーチンが、映画版ではなんとも自信なさげな若大将。
口の利けない少女と手話で意志を通じ合う役者ならではの場面も単なる読唇術になっていたし、第一全然美少女じゃない。恋に舞い上がったマーチンを演ずるウィリアム・デフォーの怪演が見たかったのに!
巡回裁判官も若い密偵に変えられていて、がっかり。
世故に長けた温厚な表情のしたに時折覗く冷たい政治家の姿が良かった原作の巡回裁判官が見たかったなあ。
なにより、原作では芝居のアドリブが役者自身も想定していなかった思わぬ真実を導き出してしまう、あの芝居が生まれる瞬間の面白さを描いていたのにくらべ、映画では単なる謎解きを告げる為の道具になってしまっている。
原作で芝居の面白さに目覚めた主人公は僧職を投げ打って芝居の世界に入っていくのに、その「芝居の面白さ」が全く描かれていないと言うのはどういうことだ!
脇役のトビアスが一座を脇から支える名優ではなく、ただの口うるさい爺さんであることも不満。
原作ではトーナメントが行われるはずなのに、トーナメントは一切ない。
ロック・ユーを見習えよ。