この下巻はすごい。「ゲーム」として捏造された「宗教」が、迫害されたコアな女性信者たちの間で完全な実体と化し、やがてその「教祖」の心身をも支配していく過程を刺激的なストーリー展開にのせ、説得的に描き出している。苦痛すぎる現実的な不幸からの逃走と狂気じみた妄想に、それらしい「教義」と「儀礼」が形を与え、やがて暴走していくとき、何が起るのか、その実情を著者は巧みに小説化した。
そうした息を呑むような「仮想現実」のなかで、しかしなお現実と虚構のはざまを行き来しつつ苦悩する主人公の姿が、誠に立派であった。自分の軽率な思いつきにより精神を呪縛され破滅していく人々を、最後まで引き受けるという責任の自覚が、ついには心底からの敬虔な「祈り」を彼に自然に行わせるに至る。あくまでも人間としての「常識」をまっとうしようとする誠実な態度が、結果として「常識」を超えた信心の次元を切り開く。
「宗教」とは何か。エンターテイメント小説という体裁でその真実に肉迫しようと試みかなり成功した、これは稀有な傑作である。