ほとんど思いつきで創作した宗教団体が、その「教祖」の思いもよらないような力や出来事に導かれるかたちで飛躍的に発展し、やがて危機に陥っていく様を描いた力作小説である。架空の宗教の創作、そしてその維持と展開の際に、既存の宗教の教理や教団の運営システムなどが豊富に参照され、主人公、というか著者がよく勉強していることを窺わせる。実名が出てくる場合もあるので、これは現代における宗教事情の勉強にもつながる有益な本だなと思った。
しかしそれ以上に興味ぶかいのが、この宗教団体を拡大させていく、信者たちの姿である。「生きづらい」系の若者たち、現世利益を求める中高年、他の新宗教団体やカルトから脱会してきた人々、超能力の獲得を希求する少年、精神の安定と金儲けの一挙両得を願う経営者やビジネスマン、人生の無常に目覚めた資産家、落ち目になり宗教に活路を見出す文学者、等々、ややステレオタイプ的ながら、しかし誠にリアリティあふれる人間たちが次々に登場し、それぞれのスタイルでこの宗教団体にかかわり、時に大問題を起す。
この人間たちの言動が実に身近に感じられるからこそ、本書はあくまでも「仮想」の現実を記述した作品でありながら、非常に説得力があり、そこに現代社会を生きる我々の偽らざる心情を発見してしまうのである。