著者は、『近代法の形成』を初めとした多くの名著をものされているドイツ法史の泰斗。東大西洋法史学のエースで四番みたいな人。ところがNiklas Luhmannの訳書を出したあたり(1980年前後)から、ポスト・モダン的なものへの志向が明確になり、伝統的な東大独逸法史学のディシプリンを若干逸脱しだす。おそらく周囲は「ありゃりゃ」と見ていたのだろうが、御本人意に介せず、「ベルリンの壁崩壊」後の1992年に本書を出す。
この本は、村上氏の重厚な法史学の見識とポスト・モダン的な学への若々しい志向が最もうまく調和した、素晴らしく知的刺戟に富んだポレミークな論文集。今読み直しても新しい発見がある、読んで楽しい(?)学術書だ。
私は、この村上氏の書によって、先年物故した科学哲学者・思想史家Stephen Toulminを知ったし、Kantの読み方とか、Simmelの再評価とかを教えてもらった。結構恩義に感じている。
東大系の方らしく、本文と同じくらい細かい註があって、これがドイツ語圏の学術情報にいろいろ導いてくれる。ドイツ語が読めない当方としてはとても助かるわけだ。
こちらのサイトでこの名著にレビューがないのが物寂しいので、恥ずかしながら私がつけた次第。知的好奇心の旺盛な方、19世紀ドイツ思想史などに関心がある方にも必読だと思う。