代官といえば悪代官。イメージは悪い。それを払拭する本だ。
歴史学者の本にありがちの、文献の引用のオンパレードといった「悪癖」はほとんどなく、すっきりとして読みやすい。しかし、記述の裏にはしっかりとした学問的裏づけがある。啓蒙書としての役割を十分に果たしている本なのだ。
江戸幕府の統治機構のかなりの部分を、代官機構は担っている。どんな統治形態でも徴税機能は不可欠。その意味で徴税の最前線にある代官に焦点をあてることの意味は大きい。腐敗してるのはむしろ代官の部下とか、公務をつつがなく遂行するには自腹を切る必要があるとか、百姓と代官の虚虚実実の関係とか、目から鱗の記述に読者は魅了されるだろう。現代の官僚機構との比較、「官官接待」のありようなどには、「昔とあまり変わってねーな」と苦笑することしきり、である。
歴史書の醍醐味はリーダビリティと目から鱗の意外性にあると私は思うのだが、本書はその見事な見本といえる。労作。