私小説は苦手である。著者の『鉄塔家族』も途中で挫折した。ただ、『石の肺』や古井由吉氏との往復書簡集『遠くからの声』は読んでいる。どうやら小説化されたものより、著者の声がダイレクトに読み取れるものが合っているようである。
掲載誌『Kappo 仙台闊歩』の創刊号から連載中ということだが、仙台在住でない私は、その雑誌を知らない。ただ、本書に納められた43回分を見る限り、1回につき4〜5日分の日記が毎号掲載されているようだ。
内容は、自身の小説やエッセイなど執筆活動にかかわること、染色家である配偶者にかかわること、作家・編集者といった仕事仲間や友人、そして日々の生活のなかで出会う鳥や草木などの自然についてである。
特に、鳥に関しては、鳴き声などで判別もでき、「渡り」を行う時期などについても詳しいようなので、季節の節目節目に、さまざまな鳥が登場する。音楽についてもしばしば触れられているが、クラシックからJポップまでと幅広い。飲食店などの店主にも親しい人がいるなど、人付き合いの面でも、幅が広い。
本書に描かれた著者の日常生活から判断する限り、「私小説家」=破天荒というイメージとは程遠い生活をしていることが理解できる。また、エッセイや小説の執筆に関する部分では、著者がどのように作品を形作っていくのか、おぼろげであるが知ることができる。
本書に掲載されたのは2002年8月から2009年12月分まで。2010年以降の分は続編でということになるのだが、著者が東日本大震災の中で、何を見て、どのように過ごし、どう考えたのかが気になるので、どうにかして早めに出してもらいたい。