渾身の全400頁、作者にとっても読み手にとっても満を持しての最終巻である。心の準備をして一気に読んだ。何冊にも渡った物語の全部をひっくるめて1つの大きな大きな伏線とするかの壮大などんでん返し的大技が繰り出される瞬間に出くわすことがある。「やられたなぁ〜」という心地良い瞬間である。この期に及んでも本巻最初のクライマックスのために伏線を張る【第一章】から、刻也が全ての真相を知る【第二章】、図らずも二転三転する『アンティーク』対決となる【第三章】を経て刻也の決意が試される。ここまでにこれまでのエピソードが走馬灯のごとく巡ってくる。ほぼ全ての「小さな物語」がこのためにあったのかというニクい演出、その遠大さに舌を巻く。そして、刻也と咲の想いが、すれ違いの中で真に花開き、最後のクライマックスへと続く【第四章】が、咲から『傲慢』と言われた刻也の、さらにナナメ上をいく傲慢な結末への導火線となりながら、これまでの“第四章”を彷彿とさせる「2人の物語」になっているのが素敵過ぎる。
前巻のレビューで予想した本巻の行方は正否相半ばだったが、素人のちんけな予想なんぞを劇的にぶっ飛ばす素晴らしい結末を見せてくれて大感謝である。未回収だった第2巻第三章が「なるほどねぇ〜」と回収されるのはある程度想定内にしても、第1巻第四章がこれほど重要な位置を占めるとは思わなかった。しかし、あれが刻也と咲の「2人の第一章」だったかと思えば、ほんのり暖かい気持ちに包まれるというものである。
見事な完結に喝采を贈りつつ寂しい思いにもとらわれるが、次は本シリーズの第四章の成分を抽出したライトなラヴコメなどはいかが?と僭越ながら提案してみたり。