本書は映画スカイ・クロラの製作過程を必要とされる7つのスキル(対話力・妄想力・構築力・意思力・提示力・同胞力・選択力)を切り口に詳述する7章とプロローグ・エピローグで構成されます。
映画の製作過程については他著と重なる部分が散見されますが、巧く纏められており、映画製作の背景と(アニメ)映画監督に必要とされる(一部は一般の仕事にも適用できる)スキルが何であるかが分かります。
しかし、本書で最も重要なのは、異例の80P(全体の約1/3)を要するエピローグでしょう。
そこには友達がおらず妄想癖があり優等生を演じ苛められっ子だった小学生時代。大ボラ吹きの探偵だった父と良く働くハイカラな母。一転落ちこぼれになり自我のよすがを革命活動に見出した高校生時代。映画に没頭し、恋に落ちた大学生時代。そして初恋の相手との結婚・就職・アニメとの出会い。初恋の相手との離婚。その娘との別れ。再婚。仕事での成功と挫折。そして再起。スカイ・クロラとの出会いと娘との再会。愛犬の死と娘の再婚。等々が赤裸々に描かれています。
ベートーヴェン・ゴッホ・川端康成・東山魁夷(20世紀最高の日本画家)ら超一流の芸術家は心に闇と孤独を抱えるが故にまた至高の芸術に到達すると私は理解していますが、押井守という芸術家(演出家・映画監督)もまた心に深い闇と孤独を抱えていたと知りました。僅か80Pですが、本書は極めて貴重な自伝でもあります。