本書は前2冊とは対照的にかなりテイストが揃った作品集になっている。
収録作の大半が携帯小説という発表媒体の関係もあってか、従来作品と
比べてきれいにまとまり過ぎている感もあるが、不気味さや嫌悪感という
面では本書が随一だ。
何故ならば、この世のものならぬ異形の存在について多く語られていた
前2冊と違って、今回の主役は自分と同じ種族だからだ。
自分を取り巻く親しいはずの存在が時折見せる理解できない部分、日々の
生活で遭遇する全く理解できない他人の言動やいわれのない理不尽な悪意。
そういう誰にでも思い当たるような不気味さや恐怖が、本書ではやや極端な
形で描かれている。
これらの「無意味で不気味な」(帯の惹句より)物語にどういう意味を
持たせるかは読者次第だろう。
平山作品入門編としてはおすすめの一冊だと思う。
ちなみに、私は『仔猫と天然ガス』の何とも厭な感じが好きだ。
やはり平山氏の作品には筒井康隆の作品を想起させるところがある。
筒井氏の空前絶後の圧倒的な才能に及ぶべくはないとしても、SF系も
書けてスラプスティックと不条理の両方で衣鉢を継いでくれそうな作家
として個人的にはかなり期待している。グロ描写や不快な話については、
実話怪談等での取材豊富な平山氏の方が上かもしれないという気もするし。
それと、話の出来等々は別にして『虎の肉球は消音器』という題名は秀逸。
『たったひとくちで…』は頂けないが。