ある殺人事件を捜査する刑事と主人公の仕立て屋イールの会話からこの映画の本編が始まります。イールは周囲の人間に嫌われ、イール自信も人間同士の関係を拒絶し孤独な人生を送っています。「イールはなぜ近所の人に嫌われているのか?」 その謎は映画の中で明らかになります。
イールの評判や態度から、刑事は彼に疑いを持っているわけですが、そんな中、イールは向のアパートに住む女性を覗くようになります。ある日彼女が覗かれていることに気づき、ある目的をもって彼のもとを訪れます。会話をし、お互いを知るにつれ孤独感を共有するようになります。イールは彼女が彼の元を訪れた訳を最初から理解しており、それを承知の上で自分の思いを彼女に伝え、ある誘いをするのですが、最後の最後で衝撃のシーンを迎えることになります。通常の映画だと、そこで恨む恨まれるといった感情を全面に出したり、淡白に終わったりするところですが、そこはパトリス・ルコント監督。ありふれた結末にはしません。
極度に孤独感を抱いた主人公のストーリーですが、一概に「作り話」では終わらないテーマだと思います。実際、現代社会でも「自分を理解してくれない」「自分の存在の意味がわからない」等の理由で命を絶ったりといった事件が後を絶ちません。この映画では主人公イールを通し、孤独感が全面に表現されていますが、イールは決して自分の存在意義を否定していません。むしろ、愛すべき女性を見つけ(例えそれが片思いであったとしても)、新たな人生の一歩を踏み出す勇気を持っています。相手にのみ多くを望むのではなく、自然に受け入れようと言う寛容な気持ちも持ち合わせています。悲しみを伴うストーリーではありますが、何故か絶望の中にわずかな希望を感じる作品でした。