京都の庭園や建築の歴史に優れた考察を残している宮元健次氏が「仏像」について語っているわけで、読む前は若干違和感があったわけですが、読み進める内にこれは素晴らしい書籍だと言う実感を持ちました。対象物の写真(モノクロ)の掲載もあり、実際訪れたことのない仏様のアウトラインもつかめました。
飛鳥・白鳳・天平・平安・鎌倉時代の仏様を対象にしているわけで、地理的には奈良や京都の寺院の有名な仏像を取り上げています。中尊寺や善光寺、高徳院や浅草寺の仏様も掲載はしてありますが、ほとんど奈良・京都の仏様なら類書でも数多く書かれていますので、結構執筆のハードルは高いと思われましたが、独自の観点とアプローチ、歴史的な裏付けのある記述ですので、初学者はもとより、美術史や仏教史の好きな多くの読者を満足させる内容に仕上がっていました。斬新なアプローチは建築や庭園、美術史で培ったバックグラウンドの広さが反映されているのでしょう
おわりにで、日本建築史を専門とする筆者が、東京芸術大学大学院の保存修復技術研究室の扉をたたいた経緯が記されていました。西村公朝師(東京芸術大学教授で愛宕念仏寺住職で仏師)がおられた研究室とのこと。博士課程で建築史に戻られたのですが、修士課程をそこで研究したわけですから、最初の違和感は全くの杞憂なのはいうまでもありません。
壮絶な闘病生活の中での執筆過程が書かれていました。旺盛な出版の裏にこのような思いがあったとは。それを知ったことで「仏様」を綴られた筆者の気持ちをより深く理解できました。
本書の内容の一部です。
第1章 飛鳥・白鳳・天平の仏たち(法隆寺夢殿 救世観音像・百済観音像 謎のベールに包まれた仏、鶏足寺 兜跋毘沙門天像 「目」のない仏、唐招提寺 鑑真和上像・薬師如来像 「贅肉」の美学 ほか)
第2章 平安の仏たち(東寺 兜跋毘沙門天像 エキゾティックな匂い、東寺 五大明王像 内に秘められた激情、鞍馬寺 毘沙門天像 北方鎮護の仏 ほか)
第3章 鎌倉以降の仏たち(興福寺 金剛力士像 解剖学を離れた力感みなぎる表現、東大寺 快慶仏 内面に向かう美、禅林寺 みかえり阿弥陀 媚びを売る仏 ほか)