東京国立博物館に勤務していた著者が、2005年1〜3月に企画した「親と子のギャラリー 仏像のひみつ」展の内容をもとに編み上げた100頁強の大型冊子です。
お釈迦様以外にどんな仏像があるのか、観音様やお不動さんは仏像なのか、仏像ってどんな風に作られたものなのか、仏像は作られた時代によってどんな特徴があるのか、仏像の中には何が入っているのか、といったテーマに分けて日本の仏像を概観できる、大変手ごろな一冊です。
刮目(かつもく)に値するのは、仏像を横から眺めて、時代による形の変遷を概説しているところです。正面から眺める、ではなくて拝むのが当たり前であるはずの仏様をあえて横から見据えてみるというのは、新鮮かつ斬新な印象を与える試みでした。
また製造工程面で、仏教伝来時に東アジアからもたらされた製法から始まり、寄木造りや割矧ぎ(わりはぎ)造りといった日本独自の手法を編み出していった点など、仏像と当時の日本人たちとの興味のつきない関係を見ました。
企画展示が小中学生とその親とを対象にしているため、専門用語を極力排して、平易な説明文に徹しています。もちろんそのために、仏像のごくごく基本的な知識を得ることはできるとはいえ、一方で仏像が体現しているはずの仏教そのものの奥深い知恵といったものにまでは手が届かない恨みがあります。
本書によって仏さまの世界に興味を持ったという若い読者には、ぜひとも人間の心が切り開いてきた仏教の素晴らしい世界へと分け入ってみてもらいたいものです。そのための足がかりとするには本書はうってつけの入門書といえるかもしれません。