絵空事に過ぎない「介護の社会化」という見出しで、本
書が『図書新聞』5/21号に紹介されていたので読む気に
なりました。ただし、決論から先に言うと内容的にそこま
での衝撃力はなかったと思います。何しろ限られた自分
の経験から引き出された北欧の個人概念と日本での「自
己」の中身のあいまいさを対比して、「介護の社会化」の
困難さを説くのですから。
とはいえ現場からの視点にこだわったレポートには捨て
がたい教訓があり、男性の介護者が陥りやすい自縄自
縛の指摘や市場原理を克服するためにケアサービスを
客観的に評価する指標の提案など肯けることもいくつか
ありました。また著者とは違う理由(しっかりとした医療
者との役割分担や連携が今は望めない)からではありま
すが、地域包括ケアがフィクションに過ぎないという評
価にも賛成するものです。
いずれにせよ、わたしは介護保険が世帯単位という措
置制度の残滓を引きずっているところに「介護の社会化」
が進まぬ根本的な理由があり、これを徹底する改正をこ
そ展望していくべきだと考えています。
<付記> 池田省三『介護保険論』2011は、本書と同じ
介護保険施行10年後の課題を見据えています。これを
推進しようとする研究者という立場で、本書とは立場が
180°違うにも関わらず、危機感を持つ箇所がケアマネジ
メントの空洞化と在宅福祉サービス(地域包括ケア)の
形骸化とほぼ同一なのには驚きました。介護保険の思
想を語るその高邁さには敬意を表します。しかし、著者
がその思想を歪めているとする低所得者対策は、低位
に置かれたままのわが国の社会保障水準がもたらして
いることも、同時にきちんと論じるべきだと思います。
(2011/11/13)