大量にBL小説が出回る中、中々「読ませてくれる」作品には出会えない。
最近の小説は「読ませる」というよりも「見せる」ものが多く、小説本来の楽しみ方から少し逸脱しているようにも思える。
そんな中、この方は久しぶりに出会った「読ませてくれる」貴重な作家様である。
中でもこの作品がとても好きだ。
大きく目を惹く華はないが、かわりに読んだ後まったりとしみじみと、心に残るものがある。
例えばやくざという一見濃い人物設定だが、遠い世界の人という感が薄い。
それが物足りないという人もいるのかもしれないが、私は彼も世の中に普通に存在している一人の人間なのだと思えた。
相手はBLでよくあるリーマン設定だが、ちょっとくたびれた普通のおじさんだったりする。が、なぜか読めば読むほど可愛く思えてくる。
身近じゃないのに書かれていることは身近な感覚で、気づけばその世界に引きずり込まれていた。
派手なのも悪くないが、本棚に最後まで残るのはこういう本だろうなとじみじみと思った。