地球温暖化の問題について、これまでに読んだ本の中で最もバランスの取れた議論が展開される良書です。
上巻
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉から次々と提示されるサイエンスのすべてが、二酸化炭素の排出抑制策を考えるための科学的根拠として集約される様に、ある種の感動さえ覚えました。
ホッケースティック曲線、シロクマの死、ハリケーンの増加など、地球温暖化の象徴として使われた資料のほとんどが、科学的に根拠がなかったり、間違った使い方をされていたりすることが明らかにされています。『不都合な真実』に至っては、プロパガンダであり、科学ではないと切って捨てられます。著者は、だから温暖化など心配いらないと言うのではなく、それでも二酸化炭素の排出を抑制すべきだと主張します。
著者の依拠する間違いのない事実は以下の二つです。
・化石燃料の消費により大気中の二酸化炭素濃度が上昇していること
・二酸化炭素濃度が上昇すると、物理学の原理(温室効果)により温暖化すること
一方で、観測されている温暖化にどこまで二酸化炭素が寄与しているのかを定量的に説明できる理論がまだ確立されていないというのが著者の立場です。
二酸化炭素の排出抑制のために、著者は年率2%の省エネの実現を提唱します。具体的には、冷蔵庫・エアコン・自動車の省エネ、赤外線反射ペンキによるヒートアイランドの防止、ペブルベッド原子炉の推進などです。摩擦がなければ水平方向の移動にエネルギーを要しないという物理学の法則からすれば、自動車というのは壮大なエネルギーの浪費と言えるものですが、軽量化も含めて、まだまだ改良の余地がありそうです。年率2%の省エネで55年後にはエネルギー効率が3倍にできるのですから、希望が湧いてきます。
環境保護主義者とも温暖化懐疑論者とも異なる著者の主張に共感を覚えました。これまで私は温暖化懐疑論に与しすぎていたのかも知れません。そのことに気づかせてくれたのは、恐怖を煽る印象操作とは違った、サイエンスベースの説明でした。