本書は無数に出回っている投資指南本の類ではない。むしろそうした類本に対する「アンチテーゼの書」と言うべきだろう。近著『ラーメン屋vs.マクドナルド エコノミストが読み解く日米の深層』では、エコノミストでありながら、アニメ、映画、政治、宗教まで題材にしてユニークな日米比較論を楽しませてくれた著者が、今度は投資・資産運用の基礎から実践の知恵までを説いてくれている。
平明な論理で語りながら、豊富なデータに基づいて、「目から鱗」の結論に導いていく。その展開は前著と同様、軽妙かつ説得力がある。
”資産運用の”魔物は私たちの心の中に巣くっているのだ
「金利格差があれば外貨投資で勝ち越せる」
「少子高齢化の日本経済は長期にわたって低成長、だから円安は不可避」
「投資のプロに資産運用を任せればリターンが向上する」
「自分が住むために買うなら借金もよいが、投資目的で借金してマンションを買うのは高リスク」
「家賃の支払いは無駄金だから早く住宅を買うべきだ」
「高度な金融工学に基づいたデリバティブを組み込んだ金融商品は投資リターンを向上させる」
著者は、こうした世間に流布する通俗的なイメージは事実に照らして検証すれば、いずれも根拠のない「トンデモ論」だと喝破する。
根拠がないにもかかわらず、そうしたトンデモ資産運用論はなぜ流布するのか。それについて、著者は「すべて投資の迷宮であなたを惑わす“魔物”の仕業だ」と言い切る。そして「最も手強い魔物は、ほかでもない私たちの心の中に巣くっている魔物だ」と読者に迫ってくる。
さて、魔物の正体とは何だろうか。それは読者自身でお読みになっていただくまでの楽しみとして、ここでは語らずにおこう。