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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
老人文学の金字塔?,
By 坂周子 (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 今ここ (単行本)
清水義範の「ワープロ爺さん」などの一連の老人シリーズは、藤枝の小説がネタ元ではないだろうか。
藤枝は作品中でつい白状して、こう書く。 「ここ数年来の私は、これまでに同じことを何度も書いて雑誌編集者からカラカワレてきたように、自分の頭蓋内の脳組織細胞が恐ろしい速度で崩壊死滅しつつあることを自分自身に思い識らされ続けて恐怖とも諦めともつかぬ悲哀に半ばうちひしがれているのである」 そうして、「小説」であるにもかかわらず、自宅の庭に雀がややって来て交尾したとか、何とかさんにどこどこへ連れて行ってもらったとか、本当に何度もおなじことが書いてある。これって、リアル・アルジャーノン? 藤枝静男は自らを、私小説作家、いや、老境に至って「私」の成分がどんどん増えて溢れかえり、「私倍増小説作家」と称している。原稿用紙にしがみついて、庭の雀の交尾についてえんえんと書く作家がいてくれて、私のような若造は、何かが救われたような気がしたのは事実である。 加速化してゆく高齢化社会にあつては、今後ますます老人文学が活況を呈するに相違なかろう。であれば、若者にはおいそれと勧められぬほどの、危險で蠱惑的な老人小説が、次々と生み出されることを願いたい。
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