五人姉妹の末娘の人魚姫は、15歳の時、人間の王子を見かけて恋をし、美しい声と引き換えに、しっぽの代わりの二本の足をえて、いとしい王子と暮らすようになりますが、その心は手に入らず……。
ハンガリー出身の画家ラズロ・ガロの、清純な色香を漂わせる、ふくよかな人魚姫の姿、海の中の描写などのすばらしさに、まず目を奪われます。そして、原作に忠実なこの話では、「人魚の王さまのお城」、五人姉妹の性格、魔女や「ポリプ」という不気味な生き物、そして、人間と人魚の命の違いなどが、とても精密に細かく描かれ、ストーリーテラーとしてのアンデルセンの力量に、今さらながら感心させられます。
また、自分が溺死寸前の王子を助けたのに、後からきた女性に命がけの献身をとられ、妹としてしか愛されない、という恋愛につきもののすれ違いには、ずっと失恋していたというアンデルセン自身が投影されているのか、古典的な恋愛物語を読むような、甘酸っぱい悲しさもあります。
そして、人間と人間以外を厳しく峻別するキリスト教思想から、人魚姫は現世的に、王子と思いを遂げることはできませんが、最後には、いつか人と同じように魂を持ち、永遠に救済される、という希望をえます。そこに、アンデルセンの精神性の高さが感じられます。
かなり長いので、読み聞かせにはつらいところですが、是非、古典的名著の原作の、残酷さや悲しさもふくめた奥深さを、子どもたちに教えておきたいところです。