85歳、丸谷才一翁の縦横無尽知的漫談である。
これぞ小説家といふ名の講釈師あるいは噺家の書く雑文ぢゃないかとおもふのですが、
どうでせう。
「小股の切れ上がったいい女」の小股とはどこなのかといふ、考察が面白い。
斯界の権威といへば、永井荷風であらう。
荷風は「町の女芸妓なぞいづれもすでに男の肌よく知りたると見ゆる女の
さして取りつくろはぬ姿につきて言ふものと知るべし」
VOYAGEと言っているさうだ。つまり部位ではなく立ちい立ち居振る舞いだと、
言ふのである。
一方、三遊亭圓朝の名跡を預かる、落語三遊派の宗家で江戸弁を守る映画監督
藤浦敦氏は「小股も大またもないんだよ。ただ女だから小股と言っただけの話」
花魁道中独特の八文字歩きが見事にできるやうになった女を
「股が切れる」と言ふさうな。