短編でも長編でもシーンが短く押し引きが明確だった1、2巻とは異なり
この3巻は冒険譚らしく各シーンが長く、シリーズ初めて構成から長編になっている。
読みやすく可読性の高い文章で難解な構成や内容を扱うのが常の作者だが、
シーンが長くなった分可読性が若干オミットされていることは否めない。
未読者がこの巻から入るのは若干敷居が高いだろう。
さらっと読める1巻に比べると、2巻、3巻、と徐々に読者に頭を使わせる
作りになってきているように思う。
ただそれでも、独特のブラックユーモア(本作はメルヘンに見えて
実は全然メルヘンでない)や饒舌に見えて計算された会話は
相変わらずのロミオ節。「助手さん」執筆の絵本の結末などは
お約束のオチなのにしっかり効果をあげていてある意味
このシリーズを象徴しているし、139〜140頁の「水」のくだりなど、
やっぱりこの人は言葉選びの天才だと感嘆させられた。
ファンにとっては期待を裏切らない一冊。
終末的世界観は芦奈野ひとしの表題作に通じるものがあるが
あれとは違う意味で「オトナ向け」である。
シリーズ未読の方は、序盤20頁を見て購入を決められれば良いかと。